サツマイモの栄養と食文化

日本いも類研究会、サツマイモの栄養と食文化を読んで。


1.栄養学から見たサツマイモ

さつまいもは、いも類の中でも水分が少なく、100g当たりのカロリーも大きい(さつまいも387Kcal、じゃがいも376Kcal、さといも353Kcal)ことから、エネルギーが大きいことが特徴で、逆にタンパク質は、じゃがいもの1/3、 さといもの2/3と少なく脂肪もほとんどありません。タンパク源は体の構成には欠かせない栄養素の一つでもありますので、その点は他のいも類に少々劣る部分です。


また、糖分が多いため甘く、しかもでん粉(アミロース)を麦芽糖に分解する糖化酵素(β-アミラーゼ)を多く含むため、蒸したり焼いたりする過程で多量の麦芽糖ができ、甘みが増えます。そして、腸内で消化しきれなかったでん粉の断片は吸収されずに腸内細菌の栄養源となり、そこで分解され腸内ガスが発生します。たくさん食べるとオナラが出たりするのはこのせいですね。


サツマイモの特徴の一つにカルシウムを多く含んでいることがあげられます。いも類の中でもカルシウムの量は多く、特に皮部には肉質部の5倍程度の濃度で含まれています。ですから、さつまいもは皮ごと食べることによって重要なカルシウム供給源になりますが、昨今ではカルシウムの取り過ぎによる細胞硬化が起こるとも言われているため、牛乳などカルシウム含有量の多い食品よりも適度なサツマイモなどのお野菜からでも十分に摂取できるのではないでしょうか?


また、黄肉種は100g中にカロチンが50μg程度含まれているので、緑黄色野菜に比べれば少ないものの、これらの野菜に匹敵するカロチン(プロビタミンA)の供給源となっています。ビタミンCもじゃがいもと同程度で、実はリンゴよりも多く含まれており、デンプン質に覆われた状態のビタミンは加熱調理しても破壊されにくいのが特徴です。


他にも、さつまいもを切ったときに出てくるヤラピン(白色の乳液)には糖化酵素の作用阻害や徴生物の生育抑制、さらには緩下作用があります。さつまいもが便秘に効くのはヤラピンの効果も1つなのです。さらに、さつまいもの中には血中の尿素量を低下させる、つまりたんぱく質の節約効果を有する特異因子が存在するという報告もあります。



2.サツマイモの歴史と食文化

サツマイモが我が国に広く普及するに至ったのは、救荒作物としての特性が認められたからです。この点で、最大の功績者とされる青木昆陽は「蕃藷考」という著書の中で、さつまいもは、代用食、菓子、酒、餅などにして様々な食べ方ができると誉めています。このような、用途の多様性という面では、他のいも類とは一線を画していると言って間違いないでしょう。


甘みが強いサツマイモは、そのまま蒸したり焼いたりして食べることができます。「蒸しいも」は単純な調理法ではありますが、これにもホクホクの味に仕上げるための様々な工夫がされていました。


また、米や麦に混ぜて炊く「いも飯」は、ごく普通の食べ方でしたし、生いもがなくなった後はカンコロ(切り干しといって、さつまいもをスライスにして乾燥したもの)を食用にしていたのです。栄養面から見ると、カンコロとイワシの丸干しという、当時の食生活は塩分を除けば理想的な日本型食生活と言えるのではないでしょうか。


サツマイモ食文化が花開いたのは江戸時代だったそうです。スナック菓子と同じ感覚で、おやつとして焼きいもが食べられるようになり、これが大人気を博したのです。その後の江戸時代のサツマイモ食文化の繁栄ぶりを現したものに「甘藷百珍」という本もあるぐらいだそう。



3.これからのサツマイモ食文化

我が国のみならず、諸外国に於いても生活水準の向上と共に主食代用品としての利用は大きく減少しています。しかしながら、我が国では昭和50年前後を境に、僅かずつではありますが1人当たりの消費量は増加基調にあります。


消費者の健康志向のより、様々な機能性があることが解明されてきています。たとえば、体内で老化や発ガン等を引き起こす脂質過酸化反応やラジカル発生反応を抑制する機能(抗酸化能やラジカル消去能)があることが知られています。アントシアン系色素を含み、紫色の肉色を持つ「アヤムラサキ」等では、その機能が特に強いそうです。


これまでの長い歴史の中で築き上げられた、多彩な食用利用のメニューの中に、このような科学的な知見を加味することにより、「医食同源」を実現することが可能になります。今後は、「健康と安心」という視点に立った新たな食文化を作り上げ、次世代に伝えていくことが求められているのでしょう。


お米とサツマイモのみで作られる「ミキ」は、生のままのサツマイモを使用作られております。それは日本食の中でもなかなか見られることのない、非常に珍しい植物性乳酸菌食品の一つになります。陽だまり堂では、それら材料を無農薬、または有機栽培の良質なものを選び、手仕込みで丁寧に製造しております。



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